|
9月某日@高円寺〜妙正寺川 |
|
朝から元気なムードメーカー、音声担当・F村氏 |
翌日、ロケ2日目。
スタッフはM川氏がいない以外一緒。多くの番組を抱える売れっ子プロデューサー、もしかしたらもうロケ立ち会いは難しいかも、とのこと。.....というよりも、ロケ初日に立ち会い、全体の流れを見た上であとはS水ディレクターに任せた、というところだろう。それがオレの理想のプロデューサー像でもある。
朝10時、今日はJR高円寺駅に集合。
今日のロケのテーマは"暗渠発見".....ん?、コレ、ドキュメンタリーなんだから当然やらせじゃなくて、つまりオレが暗渠を発見しないと終わらない、ってこと?。
まあ、打ち合せの段階で既に渋谷の暗渠道はほぼ網羅しちゃってるから、じゃあまだマネージメント構えて1年の高円寺、丁度no river, no lifeでも桃園川関連の更新やってるから、こっちはまだまだ未知の世界。しかも杉並は暗渠道の宝庫、とりあえず桃園川流域にはまだ見てない/知らない水路跡もたくさんあるので、じゃあ高円寺からスタートしましょうか、という具合。
「皆、昨日のロケで疲れたんじゃないすか?」
「いやいや、大丈夫!」
確かに、現場で何がどうなるか解らない状況なんてたくさんあるだろうし、もっと長い距離/時間、場合によっちゃ山登り、なんてことも少なくないだろうから、ドキュメンタリーの撮影班にとっちゃこれくらい慣れっ子かも知れない。が、9月というのに連日の真夏日、決して楽な2連チャンじゃない筈。
で、本日のお題、"暗渠発見"。
前日が"暗渠紹介"だったのに比べ、今回は暗渠を発見した際のオレのリアクションが狙いなのだろう。そこでオレが驚くのか、嬉しそうにするのか、それとも冷静なのか。ちなみに、自分では解らない/知らない(.....)。
|
.....とりあえず、ウチ(dragonlion)のすぐ裏から、どう見たって暗渠って道が1本あり、その先が小さな公園になってることまでは知ってる。で、その方向に進めばその先は早稲田通り、もっと進めば妙正寺川の谷。風呂屋の煙突は何本か見えるし、まあその辺ウロウロしてればきっと何か見つかんだろ!。ではスタート。
高円寺はJRの線路を挟んで高円寺北と高円寺南に区分され、南には桃園川の谷があるが、北側は比較的平坦、典型的な武蔵野平野の地形。前述のようにしばらく北上すれば妙正寺川の谷だが、割と勾配が少ない。ということは、むしろ自然の河川よりも用水路が多かった筈。
|
小公園へと繋がる小さな暗渠を辿って行くと、まだその先があった。オレは背後にスタッフの気配だけを感じつつ、マイペースで進む。もちろん、キョロキョロもするし、気になるものがあれば立ち止まったり戻ったりもする。また、完全に住宅密集地のド真ん中なので、真っすぐ流路を辿ることはまず出来ない。民家と民家の間の細長いスペースの位置を記憶しながら、グルッと反対側へ回り込むことしばしば。
高円寺の住宅街にて、珍しい木製の蓋による暗渠発見! |
民家の駐車場となっている一角に、盛り土の上から木蓋をした珍しい形のものを発見。
「へ〜え、こりゃ珍しいな。見たことないや」
嘘偽りなく、思った通りのことを口にする。ササッとスタッフが回り込み、オレの表情を捉えんとする。すかさずS水ディレクター。
「これ、面白いですか?」
「.....かなり」
on airにも登場するこの場面、もしかするとオレが発した唯一の気の利いた言葉だったかも。
更に住宅地を進む。ここはかつて馬橋と呼ばれた、丁度高円寺と阿佐ヶ谷を跨ぐ辺り。ここまでほぼ真っすぐ続いて来た暗渠、特に大きな谷底を選んで走っているわけでもなさそう。
「う〜ん、やっぱりこりゃ用水路跡ですね.....」
戻りかけたその時、たまたま眼をやった一軒のお宅のお庭。
「井戸だ.....」
そこには、庭の手入れをなさっている御婦人。
「あのー、すみません、その井戸.....」
「ああ、これ、今はもう使ってなくて、電動ポンプにしちゃったの」
「でもまだ、地下から水が湧いて来てるんですよね?」
「ええ。水質検査でもとても綺麗だって、お墨付き貰ったわよ(笑)」
またまたニョキッと延びるF村氏の音声マイク。
「あらやだ。ナニ?」
さすが関東ローム層。大きな河川がなくても、今でもこうして井戸水が健在。このお宅は此処にいらしたのはそう古い話ではないそうだが、なんでも御主人が「この辺は高い所にあるから水害は大丈夫」と太鼓判を押したそう(笑)。楽しい時間をありがとうございます。御主人と末永くお幸せに!。 |
.....さて、眼の前に立ちはだかる(ウソ)早稲田通り。これを北側へ渡るってえと、ほぼ完全にオレの知らない領域、最寄り駅は高円寺や阿佐ヶ谷などのJRではなく、西武新宿線鷺宮駅となるあたり、つまり完全にテリトリー外。ただ、北へ進めば妙正寺川があることは解っているのだから、この辺りで水路を探す、というのは決して的外れなことじゃない。一応、dragonlionの裏から辿って来て見失った暗渠筋の延長線上を進む。こちらも民家が多く、決して狙いが定めやすいワケじゃない。
やや窪んだ一角に小さな公園。四方を見回し、地形を見極めて「.....こっちかな」
すかさずS水氏、
「やっぱり、景色見てれば解るもんなんですか?」
「だって、水は上に流れることは出来ないわけだから、坂があれば下へ向かうし、そこが窪地なら一度池や沼などに水が溜まり、最も深い方向へ流れて行くのが自然でしょ。そこに湧き水があって勢いが強ければ、カーブを描かずに真っすぐ流れたり.....」
「な〜るほど!」
.....一同、感心!.....オレ、凄〜くフツーのことを言ってるつもりだったんだけど.....もっとも、その簡単なことが谷底で生まれ育ったオレに解らなかったんだから、皆にとってもそーいうモンか。
しばらく進むと、ややカーブを描く下り坂に沿って敷かれた石蓋郡を発見!。振り返ると、住宅の間からやや荒れたスペースが確認出来る。が、その上方向は見えず、やはりカーブを描いている。住宅沿いの壁を覗き込むと.....
「やった!」
ガサガサとカメラがオレを追って茂みに入って来る。幅30cmほどの草ボウボウの側溝を進むが、やはり行き止まり。
「もしや.....この上だ!」
茂みを出てオレは走った。.....別にわざとじゃない。こんな時、上流部を発見出来
ずにいきなり途中を見つけてしまったことが腹立たしく、大抵元来た道を焦って引き返すのだ。スタッフ全員、重い機材担いでオレを追う。すれ違う人々がモノ凄い形相で道を開ける。辺りを見回しながら行ったり来たり。
途中、マネPが電柱と塀の間に挟まって身動きが取れなくなっていたが、無視(爆)。
「.....見つからない.....」
一旦草ボウボウの所まで戻り、地図で場所を確認。.....ナルホド、元の流路は完全に住宅の敷地の中に入っており、外からは確認出来ない。
「この中なんだけどな.....」
.....。 |
一応どなたかのお宅なので遠慮してると、カメラ・クルーが背伸びして壁の上から中を激撮!.....知〜らないっと!。
自転車に乗った初老の紳士が怪訝そうな眼で止まって見ていた。そりゃそうだ、金髪サングラスに先導された撮影班なんて、どう考えたってロクな連中には見えない。
「.....ま、とりあえず下ります」
あんまり民家の周りにいてもなんなので、とりあえず元々見つけた石蓋暗渠沿いに下流へ。S字にカーブしているが、道幅は2車線分、石蓋は道路の片側だけ。それもほどなく終わり、また元の一般道に飲み込まれてしまう。こうなるとあとは流路予測とマンホールの位置だけが頼り。何度か"合流"と書かれたマンホールを経て、下りだった地形が徐々に平坦に。あたりは既に商店街。 |