第1回 2005/04/20 up
guest/
 米山美弥子(CITROBAL)
place/
 渋谷sankai
main order/
 加瀬:サンザシ酒ソーダ割り
 米山:緑茶玄米ハイ

加瀬: さて、加瀬竜哉.com"トモダチ対談"記念すべき第一回のゲストは米山美弥子さんです。彼女はCITROBALと言う名でこれまで2枚のアルバムを発表、シンガー・ソング・ライターとして活躍する傍ら、セッション・キーボーディストやCMナレーター、DJ等でも活躍する"才女"で.....
米山: キャ〜、この馬刺スゴ〜イ!!
加瀬: .....。
米山: ね、ね、こんなに霜降ってる馬刺、見た事な〜い!。ちょっと〜、ココ良いお店じゃない!。.....えと、何でしたっけ?。
加瀬: .....いや、君の紹介をね.....ま、いいや。つまり呑み友達ですよ、と.....。
米山: いやいや"呑み友達"とは恐縮です。どうも、米山美弥子です。加瀬さんの事を、ひとことで言うんですか?考えてきました。加瀬さんは"音の魔法使い"です。ふふふ。もちろんギター・プレイヤー、ベース・プレイヤー、打ち込みのスペシャリストとしても然る事乍ら、アーティストにとって、レコーディング等の製作現場ではもはや"影のプロデューサー"と言うべき存在。とにかく耳とセンスが凄く良い、そしてとても器用な人。あたしも何度も魔法をかけられましたー。
加瀬: 多分、お互い凄く似たもの同志なんだよな。本質的に器用だから人に頼られる。ふたりともCDのブックレットに書かれたパートの多さでは良い勝負だ。でも決定的に違うのは君は本来シンガーだから主役であるべきで、オレは逆にヴォーカル以外を.....
米山: 初鰹のお刺身、今が旬!!
加瀬: .....もういいよ!(笑)
米山: だって〜、美味しそうなんだもん!。いやでもホント、加瀬さんにはお世話になりっぱなしで.....。
加瀬: 別に世話してネェよ。呑んだ後はしてっけど(笑)。ま、元々知り合ったのは6年くらい前にCymbalsと言うバンドのデビュー・アルバムのレコーディングでオレがエンジニア、美弥子ちゃんがゲスト・キーボーディスト、として出会ったのが最初で、そこから彼等のラスト・アルバム('03年)までお互い続いて、ここ数年はオレのバンドでもサポート・キーボードを演って貰ったりもした。でも肝心のCITROBALとしてはセカンド・アルバムの"Thanks For The Music"のマスタリングをしたくらいで、どちらかと言えばミュージシャン/米山美弥子としての付き合いの方が長い。
米山: あのマスタリングは攻めの姿勢でしたね〜お互い。なんて言うか、物語を演出して貰った、って感じ。で、その後もちょこちょこと色々やって貰ったりして。暫くして「ああ、この人とは長い付き合いになるな」って思いましたよ。でもまさかこんな風に何年か後に一緒に共演出来るとは思って無かったけど。去年の暮れに、オキイレイジ(ex:Cymbals)のレコーディングで私が歌って、加瀬さんがギター弾いた曲("diver")、アレがレコーディングとしては初共演ですよね。あの曲の加瀬さんのギターは最高!。正に適任、って感じ。
加瀬: アレはオキイ君に「ジェフ・ベックみたいに!」って言われたんだよね。つまり、オッサンには丁度良かったんだよ。
米山: 加瀬さんはちっともオッサンじゃないよ、むしろ"永遠の少年"です。外見だけじゃ無く、中身も。それから加瀬さんと仕事してて思うのは、とにかく音が良くなる事。録り終わって後日完成形を聴くと「うわ〜凄く良い!」ってなってる。アレって何ですか?。整形?(笑)。
加瀬: そんな事しねえよ。しいて言うなら"化粧"だよ。整形なんかする必要がある音は初めっからNGだ。
米山: 私、デビュー前に一度声を凄〜くキレイにされちゃった事があったんです。でも、なんかその頃の私はTシャツとジーンズ、って感じでいたかったのに、凄くフォーマルな格好でアクセサリーだのなんだの、って感じになっちゃってて。で、「あの〜、ごめんなさい」って言って。で、加瀬さんとだとそう言うすれ違いが無い。
加瀬: それはその人が美弥子ちゃんの本質を解って無かったか、または戦略としてわざと逆に行ったか、だな。いずれにしてもプレゼンテーションや録りの時点でコミュニケーションが上手く行って無かった、って事だよ。それが"タレント"ならいざ知らず、音楽はアーティスト自身のもの。自分に「コレがやりたい!」ってのが無い人はアーティストじゃ無いし、それを上手く引き出せない人もプロデューサー失格。黒いものは白くならないし、白を黒にしてもいけない。オレがやるのはその色を磨く事だけ。
米山: "美白"だ!。私は整形しないけど美白はするもん(笑)。私にとってエンジニアさんは、アーティストをキレイにもヨゴレにもするスタイリスト&メイクさん、だったりもします。加瀬さんは絶対本質を変えないで、磨いてくれる。
加瀬: ただ、今は"リミックス"と言う名でその方法論が成立するようになって、オレだってやらなくも無い。そんな時の解釈の基準は"面白いかどうか"、だ。でもそれにはまず基本となる作品が存在する事が前提。そして、そんな時のアーティスト本人の胸中は複雑だ。で、既に他界してたりするアーティストの歌唱/演奏を使ったりするようなのはキライなん.....
米山: あっ、牛筋コチジャン煮が来た〜!!。
加瀬: .....オマエさあ、焼肉好きだよな.....。そう言や去年の今頃も、焼肉食って花見したっけ。
米山: 美味しいものはなんでも好きよ!。美しいものもね。

加瀬: .....さて、CITROBALファンの人にはお馴染みなのが、美弥子ちゃんの愛車Volks Wagen'88。セカンド・アルバムの"Thanks For The Music"にはズバリ"VW'88"って曲があって、夜中にクルマ飛ばして好きな男に逢いに行く、って言う.....オレさ、色んなの聴いて来たけど、クルマ乗ってる疾走感を表現出来る女性アーティストとしては君がNo.1だと思うよ。
米山: そんな事無いですよ。ユーミンとかだって"コバルトアワー"とか"中央フリーウェイ"とか、クルマものの曲があるじゃ無いですか。
加瀬: 全然違うよ。彼女はクルマを使って風景や風なんかの"イメージ"を優しく歌うけど、君は明らかに前屈みでアクセルを踏み込んでるんだ(笑)。だいたい、普通歌詞の中では女性は助手席にいるか迎えを待ってるかなのに、君は自分のクルマを自分で運転してオトコに逢いに行く。しかも演奏も歌も凄くカッ飛んでて、当然オレのマスタリングもタコ・メーターに影響する(笑)。そんなの他に聴いた事無いよ。女性の場合、大抵クルマはファッショナブルな演出に使われるのに、君は明らかに楽器や道具として使った。本来、楽曲の"疾走感"は男の仕事だもん。
米山: 男の人を助手席に乗せたい女なの(笑)。「男らしい女だ」って良く言われます(笑)。
加瀬: "粋"なオンナなんだよ!
米山: ありがとうございます。それ、江戸っ子冥利に尽きますよー。もちろん"待つ"のも女の本質なんだけど、「待ちきれん!こっちが行くわよ!」っていう(笑)。あの曲はそういうアレで。確かに男っぽいのかも知れないです。女子高だったけど女の子にモテたし。実は一時期自分が女性である事を否定したかった時期もあるんです。"男"というより少年的な物への憧れが強くなって。髪もずっとショートで。中性的でいたくて。その頃は多分自分でも男に生まれたかったんだと思うな。今は思わないけど。
加瀬: うん、オレも学生の時は髪伸ばして化粧してブラウスとサテンのパンツ着てロンドン・ブーツ履いて歩いてたから良く解る(笑)。"性同一性障害"とか"同性愛"とかじゃ無く、なんか中性的なものへの憧れと自分自身への否定、って言う時期ってあるよね。
米山: そうそう!。でもそれって音楽演ってる人に、ちょっといますよね。
加瀬: .....一応言っとくけど、オレ男には抱かれたくないからね(笑)。
米山: 私も相手は男性じゃなきゃイヤ!。
加瀬: そう言えばさ、美弥子ちゃんCMで「いいオトコ見つけた!」ってのやってなかったっけ?。
米山: アッハッハ。シャンパン(フレシネ)のCMね。「新しい部屋に引っ越した。口紅を変えた。いいオトコを見つけた」ってヤツ。でもね、結局凄く感情込めたお気に入りのテイクは使われなかったの。「美弥子ちゃん、リアル過ぎ!」って(笑)。.....でもこの業界、やっぱり男社会じゃないですか。そんな中で、今あたしは男でいたいんじゃなくて、男のひとと対等でいたいと思う。ただ、重たいものは持ってね、みたいな(笑)。
加瀬: そう言やついこの前、君のソロ・ライヴの時に「.....お、なんかスゲエ女っぽくなったな」と思ったんだよな。アレはやっぱ、パーマ失敗?(笑)。
米山: 違うんですよ〜。実はこの髪型にしてから既に2回パーマやり直してるんですけど(笑)、何故か毎日違う髪型になっちゃうの。だからただの偶然。
加瀬: 少なくとも今日よりキマってたよ。.....でも自分のライヴの日に偶然でも最高の髪型が出来る、って事はやっぱり根っからアーティストなんだよ。
米山: またまた〜、そうやって魔法かけるんだから(笑)。

米山: ここ2〜3年で自分の中で精神的な変化が起きてて、実はずっと構想があるんですよ。
加瀬: お、それはつまり.....
米山: CITROBALの次の作品ですね。.....今まではね、なんか曲が出来ちゃうとアルバムに「コレも入れちゃえ、アレも入れちゃえ!」って感じでやって来てたんだけど、今は完全なコンセプトに基づいたアルバムを作りたい。.....しばらくね、正直言って曲が書けませんでした。細かい事はいいとして。でも、私の好きな漫画家・一条ゆかりの「ひとつ傷ついたらひとつネタが出来たと思え」って言う言葉の意味が最近良く解った。無駄に傷ついたんじゃない、っていう.....(笑)。
加瀬: .....実は、しばらく前にオレが美弥子ちゃんから言われた言葉だね。
米山: 男の人の方が引きずるのよね。デリケートだし。女の方が都合よく出来てるのかも知れない。でも、そんな加瀬さんも遂に歌い始めたじゃない!。
加瀬: そうね。アレは完全に"自分を追い込む"作業だね。ただ、さっきの話じゃないけど、オレは歌い手として世の中に言いたい事があるワケじゃない。それは自分が思いつくラインが女性ヴォーカルのメロディでしか無いからなんだけど、まず基本的に自分の声がキライ。ホントはスティーヴン・タイラーみたいな声に生まれたかった(笑)。でも、色々な音楽を色んな人と演って来て、自分の音楽は女性的なんだ、と気付いた。例えばプロレスラーのテーマ曲の作曲依頼とかで、「男っぽくネエ」とか言われて何度NG喰らった事か(笑)。だから常に女性シンガーが必要だったし、それはこれからも変わらないと思う。でも、ろくに人前で歌った事もネエ奴に「もっとこう歌え」とか言う資格あんのかな?、みたいな。だから、ソロ・ライヴでは堂々と女性歌詞で歌ってる。
米山: 加瀬さんの書く曲って、凄く女性的よね。ロマンティックで、特に"華やかさ"とか"泣き"の部分がとても女性的だと思う。ハードな曲でもバラードでも、感情の起伏が凄く女性的。だから女の人が歌って、全然違和感が無い。
加瀬: 本人はただ沸き上がって来たものを出してるだけなんだけどね。
米山: CITROBALの新しいアルバムのテーマは"アーバンリゾートライフ"。チョット笑っちゃうんですけど。自分の生活に基づいた音楽っていうのを。夢のある程度に大人として隠さないで出したい。いま、精神的にとても満たされてきてるし。ただし、子供のオシャレ生活厳禁(笑)。たとえば、朝目覚めてお気に入りのカフェ.....恋人の部屋には香水の瓶ひとつ......そんなの毎日あるわけないじゃんか。あなた、オトコのパンツ洗ったことある?(笑)って聞きたくなっちゃう。肉じゃが作るのに、どこかのオシャレライフ本のレシピ通りに牛ロース買って来るんじゃ無くて、バラだよバラ!みたいな.....事は書きませんが(笑)。オシャレ生活も結構だけど、そう言うリアルな現実があるのに嘘をつかずに歌を作って行きたいです。.....ある程度、オシャレに(笑)。
加瀬: アッハッハ。凄いアルバムになりそうだな。
米山: 加瀬さんの経歴って、10代でF-1レーサー目指して、20代でミュージシャンやって、30代でエンジニアもやって.....みたくなってるじゃないですか。加瀬さんは40代に絶対なんかとんでもナイ事やらかすと思いますよ(笑)。ヴァイオリンなんかも始めちゃうしさ。
加瀬: ヴァイオリンはね、ただ単にこのストリングス・アレンジ大〜好きなオレが、実は弦の事知らな過ぎるな、って思ったの。今はそれこそ三和音を鍵盤で押さえて"Strings"って言う音源に繋げばそれはストリングス、って呼ばれちゃうでしょ。だからこそ、もっと深く知らなくちゃいけない。これはちょっと前にカルテットのアレンジの仕事やって思ったんだ。別に歳食って焦って新しいものを始めるんじゃない。ただ、今頃やっと気付いたんだよ。
米山: あたしも見習わなきゃな.....。結構長い間、歌いたい事と感じた事のベクトルが揃わなかった。CITROBALと米山美弥子が一致しなかっんだけど、それでも以前はその両者を力任せに動かす事が出来てた。でも、音楽をやるCITROBALは男で、米山美弥子は女なんだ、って事に気が付いちゃった。もう力任せじゃすまないな、と。
加瀬: それは凄く面白い話だ。何故ならオレが全く逆だからね(笑)。
米山: 加瀬さんにはその間の事みんなバレてるからな〜(笑)。しばらく前は人に「女っぽい」って言われて、嬉しくなくて自分では凄く反発してたの。でも、今は自分の中にある"母性"も"女性"もキチンと受け入れる事にした。いつまでも反発するんじゃなくて「受け入れよう」と。そこから音楽作りたくて。音楽で人に愛されたい、と心から思います。なんか今が一番穏やかなんじゃ無いかしら(笑)。いま、優しいですよ〜、私(笑)。
加瀬: .....と言うワケで、優しくなったニュー・CITROBALの新作が届く日も近いゾ、と言う事で第一回トモダチ対談は.....。
米山: 嘘!、ナニ?、ひょっとしてもう終わり?。
加瀬: そう。
米山: やっとお酒も回って来て良い感じになって来たのに〜。そうだ、まだ恋の話してナイじゃん!もう一軒行きましょうよ。
加瀬: ダメダメ。今度今度。
米山: 今度?、絶対!?。じゃ、続編で恋の話しましょうネ!。
加瀬: .....。


《渋谷sankai》
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米山美弥子 (CITROBAL)
birthday :
blood type :
birth place :
8月25日/乙女座
B
東京
'99年、アルバム"My Caution Line"(LD&K)でデビュー
2ndアルバム"Thanks For The Music"では加瀬がマスタリングを
担当

"Thanks For The Music"

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