オホン。カワウソファンクラブ「キュー」会長兼会員(会員数1名)・加瀬コム管理人です。
ここでお時間をいただきまして、僭越ながらカワウソの生態と魅力についてご説明いたします。

最近、テレビの影響等もあって絶大なる人気を誇るカワウソは、ネコ目イタチ科カワウソ亜科に属する哺乳動物で、世界各地の河川、沼、海辺等に生息し、それぞれの生息地域により細かく分類されます。二ホンカワウソは、かつて北は北海道から南は九州まで日本各地の河川、沼、海岸地帯に生息していた種を指します。
カワウソという名の由来ですが、古来タヌキやキツネ同様、人を化かしたり脅かしたりすると言い伝えられており、「川に住む恐ろしいもの」→「かわおそ」が語源という説が有力。「化かす」ということから「嘘」が語源ではないかとも言われますが、平安時代に作られた日本最古の辞典・和名類聚抄にも「乎曽」(ヲソ)と記されてもおり、管理人といたしましても「かわおそ」説を支持いたします。日本各地の川、池や谷に「ヲソ」という名前の付いているものがあることからも、とてもポピュラーな存在であったことがうかがわれます。

カワウソ鬼瓦
現在あてられている漢字は「川獺」或いは「獺」。瀬=水辺、の獣という意ですね。また水の精霊/水神である「みずち」と呼ぶ地方もあります。愛媛県南予地方の神社には、珍しいカワウソの鬼瓦があるそうです。誤解のないように一応/「鬼」が描かれているか否かに関わらず、装飾のため、或いは災厄を除けるための彫刻を施された飾り瓦のことを「鬼瓦」と呼びます。カワウソ瓦は、水神として火難除けを願って飾られたものと思われます。

カワウソ地蔵
同じく愛媛県にはこれまた珍しい「カワウソ地蔵」なるものが存在します。こちらの由来は....ご存じの方、是非情報をお寄せください(爆)。いずれにせよ、何らかの祈願的な意味を負うような、神や精霊的な扱いもされていたことは間違いありません。
ちなみに、「みずち」は漢字で書くと「鮫龍」。迫力満点の字面ですね。往々にして、精霊の類は守護を与えるとともに、時には天罰を与えるといった恐ろしい存在にもなり得ます。余談ですが、管理人が幼少時読んだ漫画に、「ミズチ」という化け物が出てくるものがありました。川に棲む巨大な蛇みたいなヤツで、当時夢に見るくらい怖かったのを覚えています。可愛い子どもだなぁ。余談はともかく、何故水神/龍なのか?ということですが、カワウソが泳ぐ姿を水面からみると、確かに蛇か龍のようにも見えます。子カワウソを引き連れて泳いでいたりすると尚更でしょう。

なんとなく龍っぽい
龍に見えるかどうかはともかく、川の最強捕食者(!)とも呼ばれます。魚やエビ、カニなど、成獣で1日1kg程度食べてしまう大食漢。あの愛くるしい扁平な顔は、水に入った時に頭をほとんど出さずに泳ぐため。胴体との境目がはっきりしないキュートで平たい尻尾も、水中での素早い動きを可能にするため。うーん、カワイイ顔してやるな、カワウソ。
基本的に夜行性で単独行動。が、子どもは1年以上母親と一緒に暮らし、親子でなくとも小さな群れで生活することもあったりと....いろいろな文献を見ると割とフレキシブルですね。住環境や必要に応じて変化するようです。また成獣の行動範囲は数10kmに及び、行動範囲内に巣穴以外にも「ねぐら」「やすみ場」と呼ばれる拠点を作ります。

なんとなく猫っぽい
こうした習性が人工水路において"漏水"を招く結果になったものと思われます。いらんことするやっちゃなーと思われるかも知れません(確かに被害を受けた側からすれば大迷惑ですが....)。しかしながら、彼らは彼らで、「生きて」いくために必要なことを、必要なだけ、していたに過ぎません。
また、河口付近/海岸地帯に住むコたちは、海水で泳いだ後にはちゃんと淡水で体をすすぎ、「ぬた場」(泥浴びにも使うらしい)と呼ばれる拠点でちゃんと体を乾かすんだとか。こういうマメな特徴を見ると、ネコの仲間というのも頷けます。


あ、なんか学会チック。
すみません、分不相応で。持論ぶちまけるとか、あの、そんなんじゃないんで(爆)。
先ほど、カワウソは狐狸の類とされ、人間を化かすもの・悪さをするものと言い伝えられていたと述べました。有名な本所七不思議のひとつ、「置行堀」(おいてけ堀)もカワウソの仕業ではとする説があります。民話ですからバリエーションは数多くありますが、要約すると釣り人が「おいてけ〜」という声を聞いて面食らって逃げ帰ると、魚籠はからっぽ/たくさん釣ったはずの魚が消えていた、っていうお話。「おいてけ〜」という声はともかく(爆)、魚籠から「ラッキー♪」とばかりに魚を持って逃げるなんざ、如何にもカワウソくんがやりそうな可愛らしいイタズラじゃありませんか。自分がされたらイタズラじゃ済まないとは思いますけど。いや、あの可愛らしいおてて(前足ですね)で、魚籠から魚をぎゅっ  ....許すかも(....)。
そんな「イタズラ」レベルのお話もあれば、パワーアップして「妖怪」レベルのお話も。猟師の仕掛けた罠で怪我をしたカワウソの家族が、恨みをはらすため、のっぺらぼうや口裂け女(懐かしいなぁ)の如き姿に化けてその猟師を化かすとか、目もくらむような美女に化け、言い寄ってきた男を喰い殺すとか(ひえぇ)。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」にもそのものズバリの「獺」が描かれ、しっかり妖怪の仲間に加えられていました。同じ「画図百鬼夜行」に登場する「ひょうすべ」もカワウソだとする説があります。
こ....これは怖い(爆)。
また、数多の「河童伝説」もカワウソのことではないかという説があります。川や海に棲み、大きさは3歳児くらい、二本足で歩き....と、如何にも元になりそうな要因多し。河童といえばですね、かの「まんが日本昔ばなし」で管理人的にいちばん好きなお話は「河童の雨乞い」です。いじらしくてもう、今見ても涙無くしては見れ  あ、話が逸れましたね。というわけで、カワウソ繋がり(?)で河童のことを調べていて、最近知った(個人的に)衝撃の事実。河童の別名として、シバテン、タキワロ、エンコウといった伝承があります。....エンコウ?猿猴と書く?なにおぅッ!?(管理

猿猴橋(広島県広島市)
人テンション↑↑↑) 公私ともによく訪れる広島には、猿猴川という大きな川があります。地名にもなっている猿猴橋という橋も。....なんと!あれはカワウソ川にカワウソ橋だったのか!!今度からそう呼ぼう!私的に!(....)
逸れまくりで申し訳ありません。カワウソの民話に戻ります。基本的にイタズラだの化けるだの、あまりよく見られていないお話が多いのですが、中には助けてもらったカワウソが大雨の夜道で傘をさしかけてくれたり、道案内をしたりと、恩返しする心温まるお話もあるのです(強調)。その中から、現在の世田谷区鎌田地域に伝わる民話をご紹介いたします。
....健気じゃありませんか。えー話じゃありませんか。
そして、この思いやりが現実にあれば ─ 日本人がカワウソに限らず自然を敬う心を持ち、自らの奢りを少しでも反省していれば、その後のニホンカワウソを襲う悲劇は避けられたかも知れません。


そう、かつては"迷惑になるくらいの"生息数を誇り、民話や伝承にも数多く描かれる「ありふれた」存在だったニホンカワウソ。ところが、彼らの楽園は次々と奪われていきます。開発という名の環境破壊によって─。
そうして、多くの原生動植物と同じように、ニホンカワウソも棲み家を奪われ、食べ物を奪われていきました。....ってね。これは決して過去の話ではありません。現代に生きる我々の責任と罪でもあるわけです。その環境破壊に加えて、ニホンカワウソには別の悲劇も襲いかかります。"毛皮目的の乱獲"。カワウソの毛皮は手触りが良く保温性

ニホンカワウソのマツ
に優れています。大正〜昭和初期にかけて、その毛皮目当ての乱獲のせいでカワウソの数は激減。人間がその罪の重さに気付いた頃には、時すでに遅し。1928年(昭和3年)に捕獲禁止指定、1964年(昭和39年)天然記念物/翌1965年(昭和40年)特別天然記念物に指定されるも、減少を食い止めることは出来ませんでした。1969年(昭和44年)・愛媛県「とべ動物園(当時/道後動物園)」にいた「マツ」が亡くなって、動物園での飼育記録も途絶えました。
....そして、1979年(昭和54年)・高知県須崎市新庄川での目撃例を最後に、ニホンカワウソはその姿を現しておりません。このときには、本来夜行性のはずの彼らが詰めかけた多くの見物客や報道陣のカメラの前に、日中でも姿を現したそうです。
まるで 最後の挨拶をするかのように

"しんじょうくん"&いとこの"エネくん"
しかし。須崎市ではマスコット・キャラクター"しんじょうくん"を掲げ「すさき・かわうそクラブ」や、「新荘川の自然とカワウソを守る会」などが活動中、おとなり愛媛県では県獣に指定、ほかにもニホンカワウソを愛して止まない方々による環境保護活動は全国各地に存在します。....確かに

とべ動物園ロゴ
、罪に気付いた時には遅すぎたんですが、"Better late than never"/前述の「とべ動物園」のロゴマークにはカワウソが描かれています。何とかしようと懸命の方々の愛を感じます。身勝手な人間のひとりとして彼らに謝るとともに、「どこかでまだ暮らしている」と、管理人も信じております。


さて。そういった経緯で、現在ニホンカワウソはその存在を確認されておりません。
「え?今でも動物園にいるじゃん」 ブー。
現在動物園や水族館で見られるのは、ニホンカワウソではなく、ユーラシアカワウソ、コツメカワウソなどなど、海外からやってきたカワウソくんたちなのです。ニホンカワウソでないことは残念至極です。しかし....しかし..... カワウソは可愛い!赤ちゃんカワウソに至っては、反則ものの愛くるしさです。なぜにこんなに可愛いのか、見た目だけではないその可愛さのポイントとは!

わかってます。前足です。しかしですね、もう、あの愛くるしさを見たら「おてて」と呼びたくなるじゃありませんか!(ドン!)水かきもついている彼らの「おてて」は、とても器用にできています。その器用な「おてて」を使って、魚を捕まえたり、石やボールなどをくるくる回して遊ぶこともあります。....あぁ握手したいッ!
失礼、取り乱しました。
そして、「おてて」で何かをすることが多いせいか、大きな尻尾でバランスをとりつつ、ひょこっと後ろ足で立ち上がることがしばしば。時には、そのままトコトコと歩くことも。もう、撃沈されます。

「獺祭(だっさい)」という言葉をご存じでしょうか?由来は、カワウソは獲った魚を川岸に並べる習性があり(先ほどご紹介した民話にも描かれていますね)、それがまるで喜んでお祭りをしているように見える、ということだそうです。この言葉に代表されるように、カワウソというのは「遊び」のうまい動物です。魚だけでなく、お気に入りの石を集めて寝る時も抱っこしてたり(笑)、瀬を滑り台代わりにして遊んだり。....あぁなんて可愛い。好奇心も旺盛で、カメラを見ると寄ってきたりするものもいるそうです。ある意味サービス精神も旺盛。

カワウソは、成長するにしたがって自然に泳げるようになる....わけではないのです。親から泳ぎ方を教わって、初めて泳げるようになります。何らかの事情があり人間の手によって育てられたカワウソも、泳ぎを教えてあげないと泳げないままらしいです。
西日本にある某動物園には、密輸の最中に保護され、親から泳ぎを習ってないせいで泳げなかったというカワウソが居ます。担当の方々のご努力の甲斐あって、現在はかろうじて泳げるとか。そのカワウソも母親になり、自分の苦手な泳ぎを、子どもに一生懸命教えているそうです。
家族単位で生活する群れでは、先に生まれた兄弟が、1年後に生まれた自分の妹・弟たちを育てる手助けもするそうです。....と、聞いたんですが。管理人の見た事例写真では、「小さな妹・弟を使ってままごと遊びをしたくてしょうがない姉・兄を母が叱りとばしている」(爆)にしか見えませんでした(笑)。ま、「お母さんの真似をしたい」のは子どもの常でしょう。そうやって、自分が親になった時の準備をしていくんです。エライなぁ。愛だなぁ。

....しかし。ここでひとつ管理人からマジメな提言です。
昨今のカワウソブームのせいで「飼いたい!」という声をよく聞きます。確かに、可愛いのです。愛くるしいのです。しかしながら、肉食の野生動物なのです。
軽い気持の素人の手に負える存在ではないということは、忘れないでください。「可愛い」という理由だけで飼い始め....ずっと、飼えますか?ずっと、家族として暮らせますか?カワウソに限ったことではありませんが、生き物を飼うということには、義務と責任が伴います。それを忘れないでください。
某水族館のカワウソ飼育担当者さんのお話。育児放棄されてしまった子カワウソを育てるため、24時間一緒の生活/ご自宅にも連れて帰らざるを得なかったそうです。結果、ご自宅の一部屋は「人間が使えない状態」になってしまったと....匂いとか、イロイロ(詳細割愛)。そういった日々の状況をブログに公開し、昨今のカワウソ・ペットブームには苦言を呈しておられました。軽い気持でペットにできる動物ではありませんよ、と。もちろん、その子カワウソくんは、親代わりの飼育担当者さんの元でスクスク成長し、現在は水族館で他のカワウソたちと一緒に暮らしています。
正しい知識と愛情があってこそ、初めて親代わりになれるということなのです。
もうひとつ、恐れることがあります。"イイ商売になる"ブームが何を引き起こすか。
乱獲、密猟、そして密輸です。
ニホンカワウソに与えた悲劇を、彼らにもまたくり返しますか?
先ほど「握手したいッ!」と申しあげましたが 本当にしたいんですが できないほうが彼らにとっては幸せだとも、管理人は考えております。
自然のものは、出来ることならば自然の中にあるのがいちばん幸せな形で、身近におきたい、というのは単なるエゴです。
手の届かない存在でいいのです。そうあって欲しいと願います。


では。「手が届かなくてもイイッ!でも見たいッ!あの愛くるしい姿を見たいのッ!」という方々のためのコーナーです。先日、一体何年ぶりだろう....動物園へ行ってまいりました。ではご紹介しましょう。上野動物園のユーラシア・カワウソ/ゴハンの時間になると、ひたすら「キューキュー」鳴きまくるミーちゃんと、動きが速すぎてフレームに収まらないマー君です。

ミーちゃん

マー君(....)
そして

ミーちゃんのおてて!おててぇッ!
可愛らしいですね。愛くるしいですね。そしてここ上野動物園には、「ゴハンを食べるところを間近に見れちゃうよ」水槽がありまして(そんな名称じゃないとは思います)、給餌タイムには人だかりができます。とにかく走りっぱなし泳ぎっぱなしで写真に撮れないマー君をゲットすべしと、人波をかき分けかき分け(常識の範囲ですよ)動画に収めてまいりました。
では、音声なしで申し訳ありませんが(周囲の方々の会話及び、つまずいた管理人の叫び声が入っておりましたため)ミーちゃんとマー君のゴハンタイムをご覧ください。
ご覧のように、「ゴハンを食べるところをかじりつきで見れちゃうよ」水槽(名称変わってますが)で食事をしてくれるのは、ミーちゃんだけでした。マー君はゴハンをもらうと、トンネルを潜ってとっとと落ち着ける場所へ移動。それぞれ個性がありますね。
それでは続いて、特選カワウソギャラリーをご覧ください。












では最後に。加瀬どのもメロメロにさせた、選りすぐりの1枚を。
こちらです。







いかがですか?まるでカメラマンに自慢するかのように我が子を差し出してみせるこの姿。

この子どもの一生懸命なおてて!


我が子をしっかり抱きしめる親のおてて!




そして何よりもこの

自慢げな顔!!!
悪さもします。イタズラもします。でも、こんなに可愛い動物なのです。

以上、カワウソファンクラブ「キュー」会長兼会員(会員数1名)・加瀬コム管理人がお伝えいたしました。
ご精読、ありがとうございました。キュー。





「画図百鬼夜行」 鳥山石燕
「金色の川」 椋 鳩十
「ニホンカワウソの願い」 大西伝一郎
世田谷区議会だより

民話 「野毛のカワウソ」
「カワウソがくれた名剣」
「かわうそどんのくじらとり」
「忘れんぼ」
「兵九郎とカワウソ」
「松縄手のむかしばなし」
「カッパと寿円禅寺」

須崎市HP
愛媛県HP
愛媛県立とべ動物園
かわうその里すさき
上野動物園


ほか
多くのカワウソファンの方々/カワウソを愛するすべての方々に
心より御礼申しあげます




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