これまでニック・ワースのCFDコンセプトに拘って来たヴァージンは、不振から抜け出すために遂に風洞テストを検討している模様。
ヴァージン・レーシングのF1マシンは、元ベネトン/シムテックのニック・ワースのCFD(計算流体力学)によるコンピュータ上のデザインに拘り、2010年の参戦からこれまで一度も風洞実験を行っていない。これは特殊な空力デザインを要するフォーミュラ・カーのデザイン/開発分野としては極めて斬新で、少なくともF1ではヴァージンのみが行っている方法である。が、現実的には他のチームに比べて明らかに性能面で劣り、初年度の成績はコンストラクターズ・ランキング最下位、と言うものだった。今季はドライバーからもこのコンセプトへの不満が出ており、チームはこの不調から抜け出すために、風洞テストを行うことを検討し始めている。ヴァージン・レーシング会長のグレーム・ロードンは「私個人としては、それが風洞であろうが、ハンガーを使ったダウジングであろうが、それが金銭的な条件に見合い、きちんと結果を出すのであれば何でも構わない」と語り、チーム代表のジョン・ブースも「私は風洞テストが4年前と同様、非効率的でとんでもない金額を要するものだとは思っていない。ルール上の制限が設けられ、4〜5年前に比べて20倍も効率が上がったんだ」と風洞テストに前向きな姿勢を見せている。
またヴァージンは、元ルノーのテクニカル・ディレクター、パット・シモンズをコンサルタントとして招き、チーム不調の原因を分析するよう依頼。ブースは「2ヶ月前に我々と契約したパットがチームの概観を行っている。彼は日々エンジニアたちと共に働き、我々の状態を概観している1〜2ヶ月で彼はある程度の結論とアドバイスを提示してくれる筈だ」と期待を覗かせた。
ヴァージンはどうやらメルセデスGPの設備を利用してマシンの評価を行い、CFDが示すものが正しいのかどうかのデータの比較を行うらしい。ヴァージン同様昨年デビューしたHRTも、今季のマシン開発のためにメルセデスGPの風洞を使用する契約を結んだと報じられている。眼の前のライバルー最下位争いではあるがーに遅れを取らないよう、両者共に必死の様相と言える。