フォースインディアのエイドリアン・スーティルは、ルーキーの後塵を拝するシーズンを送り、今後の動向に関し本音を語り始めた。
フォースインディアの前身であるスパイカーから、ビジェイ・マルヤがチームを引き継ぐよりも以前から同チームに所属するスーティルは、これまで常にチーム・メイトを凌ぎ続けていることから、常に移籍が噂されて来た。しかし、今季は2010年のDTM(ドイツ・ツーリング・カー選手権)チャンピオンであり、メルセデスの若手育成ドライバーでもある注目のルーキー、ポール・ディ・レスタがチーム・メイトとしてフォースインディアに加入。なんと開幕からこれまでの3戦全ての予選でディ・レスタがスーティルのポジションを上回っている。
スーティルは自身のチーム移籍の可能性を否定せず、自身の最近のキャリアを株式市場に例え、正しい瞬間に資本化しなければならないと語る。「キャリアを続ける中でステップ・アップしたいものだよ。新しいチームだろうと、同じチームだろうと、とにかく次のステップが必要なんだ。2010年は僕にとって良いシーズンだったから、特にこの数戦は問題だった。良い印象を付けておきたいところなのにね」また、スーティルはF1デビュー直後から結果を残すディ・レスタの活躍を「気にしていない」と言うが、ディ・レスタが普通のF1ルーキーとは違うと指摘するのを忘れなかった。「いつでもベストの相手と戦いたいと思っている。ストレート・ラインも満足に走れないような未熟なドライバーと戦うためにここにいるわけじゃない。ただ、ディ・レスタは典型的なルーキーではない。彼はDTMで4年間をファクトリー・チームで過ごし、学んで来ている。F3やGP2から来て、ミスするような連中とは違う」
ヴェッテル、シューマッハー、ロズベルグ、ハイドフェルド、グロック、そしてスーティル。ミハエル・シューマッハーが7度の王座を穫り、層だけは強力に厚くなったドイツ勢の中で凌ぎを削るのは相当な労力を擁する。スーティルの持ち味はその安定性と質の高さ。爆発的な瞬発力はないが、冷静で確実なレース運びはエンジニアの要求にも満足度は高い。が、今季のF1は少々彼のスタイルとは違い、ピレリ・タイヤやDRSなどの特性による「アグレッシヴさ」が求められる。そこで頭角を表して来たのが、ぶつけ合いながらどけどけと前を争う、若きDTM王者のディ・レスタ。メルセデスからの期待も大きく、ようやくスーティルにも奮起する相手が現れた、と言うところか。現実的にスーティルが今行けるトップ・チームはなく、自らのスタイルを自問自答するには良い機会。