レッドブルが搭載するルノー・エンジンに満足せず、メルセデス・ベンツやVWら他のメーカーとのパートナー・シップを模索する動きを受け、メルセデスのモータースポーツ部門の責任者であるノルベルト・ハウグは独自の考えを主張している。
現状のエンジン・パフォーマンス不満を持つレッドブルは、エンジン開発の凍結などによる戦闘力の均一化をFIAに対し求めているが、ハウグは「エンジン性能の均一化はF1のやるべきことではない。競争は平等の対極にあるべきものだ」とし、レッドブルの主張を一蹴した。「それなら我々はGP2に行かなくてはならなくなる。最高峰であるF1に求められるのはあくまでも開発競争であるべきだ」との考えを主張した。更に「レッドブルに同情はしないよ」と、現状の自社のパフォーマンス/パートナー・シップについても不満がないことを明らかにした。
昨年準・ワークスだったマクラーレンと事実上別れ、社内の反対をも押し切って独自のワークス・チームであるメルセデスGPを立ち上げたメルセデス・ベンツは、F1にかける総予算は5年前に比べて約70%まで減っていることを明らかにした。「我々はコスト削減を実現している。それが意味を持つには、ライバル・チームもスケール・ダウンする必要がある」とし、エンジン開発競争で他社を圧倒している現状に満足していることを強調した。
実際、現状でレッドブルのマシンにメルセデス・エンジンを搭載すればダブル・タイトル獲得はもっと容易いものだっただろう。が、わざわざブラウンGPを買収してワークス・チームを作ってしまった以上、今メルセデスに求められているのはあくまでもワークス・チームの成功であり、マクラーレン・メルセデスやフォースインディア・メルセデスの好成績は最重要項目ではない。よって、噂されているように中団グループに位置するフォースインディアからエンジン供給契約を奪い、レッドブルに搭載することはもはやデメリットである、と社内では考えられている。彼らの目的はあくまでもワークス・メルセデスGPの勝利であり、他の供給チームの成功はダブル・タイトル獲得という大成功の後に初めて考えれば良いことなのだ。